人生後半の『ほぼ写真日記』

笹の葉8の日々散歩とひとりごと

まぼろしの橋

              ~誰にも迷惑をかけない『妄想散歩』のすすめ⑤~



はてさて、確かに橋は架かっている。


しかし、林に入ると橋の渡り口が見つけられない。


男は狐につままれたような気持ちになりながら、林の中を徘徊した。



すると、今まで何度も通ったはずの場所に、忽然と橋があらわれたではないか。

「これは、いったいどうしたことか。」


男はいぶかしく思いながら、橋の渡り口へと近づいた。



男は何か釈然としないながらも、恐る恐る足を踏み出す。


すると、橋の先にはなにやら周りの木々に比べて、一層青白く浮かび上がる一本の木が、ひっそりと佇んでいた。



その幹の中から、何かじっと見られているような気配がし、
一瞬身がすくんだが、


同時に、何か抗いがたい誘惑にかられ、


男は、とうとう橋を渡り切ってしまった。



すると、その木は大きく口をあけたと思うや、

ものすごい力で、男を幹の中へひきづり込んだ。



林の中に男の絶叫が響いたが、


程なくして、静寂に包まれたのであった。


何ごとも、ここでは起きなかったかのように…。


          



※ひとりごと
これは、在原業平『伊勢物語』にありそうな話のイメージで読んで下さるようお願い申し上げます。(←おいッ、身の程をしれよ!)