天上の笛
~誰にも迷惑をかけない『妄想散歩』のすすめ⑥~
鎌倉時代後期の設定でお願いします。(←随分こまかいな)
男の生業は笛師であった。
笛の材を求めて、いつものように山に分け入り、ひと仕事を終え、湧き出る水で喉を潤した。
ふと、顔を上げると、一筋の道に気づく。
「こんな所に道があっただろうか…。」
男は、自分がこの辺りを知らないはずはないと思ったが、
しかし、頭の片隅で、
「もしかしたら、自分の知らない道があるのかもしれない」と、己に言い聞かせるように、歩を進めた。
程なくして、木々の間に屋敷が見えてきた。
庭には、この世のものとは思われぬ、白い大輪の花が、芳香を放って咲き乱れている。
しばらくすると、案内の者が現れ、
「お待ちしておりました、どうぞこちらへ。」と、男の来訪を予感したかのように、屋敷へいざなうではないか。
そこには、咲き乱れる花に見まごうばかりの美しい女がいた。
女は唐突に、
「笛を作って下され。」と言う。
男は、断る気にはとてもなれない、己の心をいぶかりながらも、
そこに留まり、笛を作ることになったのであった。
ここは、穏やかに時がながれ、なぜか懐かしく、いつまでも留まりたい気持ちになっていった。
~※~~※~~※~~※~~※~~※~~※~~※~~※~~※~~※~~※~
そうこうするうちに、男は笛を造りあげてしまった。
男「はからずも、随分長居をしてしまったなぁ」
あれから相当の月日がたったはずだ。
心に残るが、やはり戻らねばと暇を告げた。
月明りをたよりに、来た道を戻り、
来た時に喉を潤した、湧き水のところにたどり着き、男の足はふと止まった。
「おや、何か違う…」
微かな違和感が、しだいに確かなものになった。
違う記憶の扉が、ひらいたように感じた。
「自分はあの女を知っている。」
なぜ自分は気づかなかったのだろう…
悔やんでも悔やみきれない。
あれは昔、むげに都に置き捨てた女ではなかったか?
男はもと来た道をやみくもに戻った。
しかし、二度と、あの屋敷を見つけることはかなわなかった。
だが、あの日以来、
時折、どからともわからぬ彼方から、笛の音がするようになった。
男は思った、もしかしたら、自分は許されたのだろうかと…。
※ひとりごと
何かしら理由があってアップしなかった写真を、順番に並べてそれを繋ぐように強引に話を作っていて、言わば、わけあり写真の敗者復活戦(←大袈裟)
だから、ちぐはぐな感じがしたり、変な写りだったりしますが、そこはスルーしてくださるようお願い申し上げ奉りまするゥ~。






このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。